2006年02月13日

「金融の量的緩和 」とその影響

金融の量的緩和
全国消費者物価指数予測がプラスに転じる → 解除が近いとの観測 → 金利が急上昇する

「量的緩和解除へ、3月以降が重要」福井・日銀総裁の発言
日本銀行の福井俊彦総裁は9日の金融政策決定会合後の会見で、量的緩和政策を解除するかどうかについて、「(3月の)次回会合以降、(消費者物価)指数の判断がより重要になっていく」と述べた。同時に、消費者物価が上昇基調に転じることにも自信を見せ、解除が近いことを示唆した。市場関係者の間では、同総裁の発言を受け、4月前後の解除が一段と有力視されている。


日銀の量的緩和とはなんだろう
【Harukawhiteさん(東京都)からのギモン】
日銀の量的緩和について、今までの流れを含めて詳しく教えてほしい。
イー・ウーマンより

「ゼロ金利政策」が行き詰まったので
  バブル崩壊後、長引く不況を何とかしようと、日銀は公定歩合の引き下げを続けてきた結果、とうとう公定歩合はほぼゼロに近づきました。実質上ゼロ金利状態になっています。でも、金利はゼロより下げられませんね。このため、金利を通じた景気のコントロールができなくなってしまったのです。
  そこで考えられたのが、量的緩和です。金利の調節ではなく、資金の量の調節に踏み切ったのです。具体的には、各銀行が日銀に持っている当座預金の口座に、日銀が資金をジャブジャブと提供するという形です。「資金提供の制限を緩和して量を増やす」ので、量的緩和というのです。
  では、どうやって、資金をジャブジャブ提供するのでしょうか。

日銀は、こうして資金を供給する  企業間の取引では、現金取引というのは、ほとんどありませんね。商品の売買が行われると、支払いは通常、手形です。たとえば「6か月後に○○万円を支払います」という約束手形を発行するのです。手形を受け取った企業にも資金のやり繰りの都合がありますから、手形を手元に持ったままにはしておきません。それを取引先の銀行に持ち込んで、現金に替えてもらいます。このとき銀行は、「手形は6か月後に現金になるから、それまでの間の利子分を差し引いた金額を払います」ということになります。銀行が手形を受け取り、手形の額面より割り引いた金額を払ってくれるのです。これが「手形の割引」です。
  こうして、各銀行には、手形が大量に保管されています。あるいは、企業が発行した借金証書である社債も大量に持っています。最近では国債も大量に保有しています。
  日銀は、こうした手形や社債、国債を、銀行から大量に買い上げるのです。買ったお金は、日銀内の各銀行の当座預金口座に振り込みます。各銀行が、その口座から現金を引き出せば、日銀から紙幣を受け取りますね。このとき、日銀は紙幣を発行したことになるのです。これが、量的緩和政策の具体的な中身です。

当座預金残高を積み上げた
  日銀内の各銀行の当座預金残高は、通常は合計で5兆円です。最低でもその金額は維持することを求められています。これが法定準備金です。各銀行は、法定準備金に少し余裕をもたせているので、6兆円程度が預けられてきました。それを、日銀は、量的緩和によって、なんと30兆円から35兆円程度にまで増やしているのです。
  各銀行にしてみれば、当座預金がいくら増えても金利がつきませんから、少しでも企業に貸し出せば、金利収入になると考え、貸し出しを増やすはずです。銀行が貸し出しに積極的になれば、景気回復にもプラスになるだろう……というのが、量的緩和の趣旨なのです。
  これで、本当のところ、どこまで景気回復に効果があったのかはわかりません。日銀にある当座預金を貯水槽にたとえ、日銀から各銀行への資金ルートをホースにたとえると、日銀の貯水槽の水が大量にたまって水圧が高まるから、水がホースを通って銀行に行き、そこから世の中に出て行くだろう……という、願望でしかないのです。
  その通りに資金が世の中に出回り、どれだけ景気回復につながったのかは、まったく不明です。ほとんどそのまま積み上がっていたのではないかとみられています。
  このように、無駄に積み上がっている当座預金のことを、業界では「ブタ積み」といいます。「ブタ」というのは花札用語。価値がないことをいいます。せっかくの資金が、使い道なく無駄に積み上がっているという意味で、こんな呼び方をするのです。
  ただ、「各銀行の当座預金口座には大量の資金がある」ということをみんなが知っていれば、個別の銀行に対する信用不安は解消します。金融不安の払拭には役に立ったのです。そのことが、結果的に金融システムに対する安心感につながり、景気の最悪期からの脱出に効果があったことは確かでしょう。

本当は、解除しても大丈夫なのだが
  こう考えると、日銀が量的緩和を解除したところで、実際には何の影響もないはずです。日銀は、「量的緩和を解除しても金利をゼロにしておく方針に変わりはない」と言っていますし。
  しかし、「日銀が量的緩和を解除した」ということになると、「日銀は金融引き締めに方針を転換したのか」と受け取られる可能性があります。「金融が引き締められると、これまでのような景気回復の速度に赤信号がつくかも知れない」というムードが広がり、結果として景気回復にブレーキがかかることを、小泉内閣は心配しているのです。
  いま全国を見渡すと、東京の都心では、地価が上昇し、高額のブランド品が飛ぶように売れ、億ションと呼ばれるマンションも売り出せば即日完売。金曜日の夜には都心の繁華街でタクシーがつかまりにくくなるなど、“ミニバブル”の様相を呈しています。
  日銀の政策決定者は、みんな東京在住ですから、この様子を見ると、「バブルがとりかえしのつかない状態になる前に、少しずつ手綱を締めねば」という気にもなります。
  その一方で、自民党の有力政治家たちは、地方選出。地方は、景気のいい愛知県を除き、まだまだ景気回復の見通しが立っていません。そういう選挙区から選出された政治家にしてみれば、「景気回復に水を差すようなことはやめてくれ」と言いたくなります。

経済界は円高を心配している  経済界にも、量的緩和解除の方針を心配している人たちがいます。主に輸出産業の人たちです。
  量的緩和を解除すると、海外の投資家は、「日銀は金融引締めに転じるのだな」と受け止めます。量的緩和を解除しても、実際には大した変化はないのですが、海外の投資家には、そんな細かいところまでわかりません。投資家の多数が「日銀が金融緩和の方針を撤回する」と受け止めていれば、判断は間違っていても、世の中は、そちらへ動きます。これを業界では「マーケットが間違う」と表現します。マーケットつまり投資家の判断が間違うことがあるのですが、間違いに気づいた投資家だって、「マーケットが間違っている」と言っているうちに損をしてしまいますから、間違いを承知で大勢につきます。結果、マーケットが間違った方向に大きく動くことがあるのです。
  海外の投資家が、「日銀は金融引き締めに入る」と判断してしまう以上、次には、このような判断をします。「これまでは日本で資金を低利で借り、その資金をドルに替えてアメリカで投資してきた業者が多かったから円安になってきた。これから日本の金利が上昇すると、日本の円をドルに替える動きがストップする。これからは円安に歯止めがかかり、むしろ円高に動くだろう」
  こう判断すれば、多くの投資家が円高を予想有して、円高になる前にドルを円に替えてもうけようとしますから、結局、円高が進みます
  円高が進むと、輸出商品は海外での価格が上昇しますね。海外で商品が売れなくなる心配があり、なるべく日本国内の金利が上昇しないことを望むのです。

政府は財政赤字拡大を心配している
  また、財務省は、財政赤字拡大を恐れています。日銀が量的緩和を解除すると、マーケットには、「日銀が金融引締めに方針転換した」と受け取られます。その結果、金利が上昇に転じます。別に日銀は金利を引き上げるつもりはないのですが、マーケットが勝手にそう判断してしまえば、実際に金利は上昇します。
  いまの日本の国家財政は大変な赤字。膨大な国債を発行していることは、ご承知の通りです。これまでは金利がほぼゼロだったので、国債の金利も低くてすみました。しかし、金利が上昇すると、国債の金利も高くなり、政府としては、金利の支払いに追われることになります。財政赤字が、雪だるま式に拡大する恐れがあるのです
  財政再建をめざす財務省としては、いちばん避けたいシナリオです。
  かくて、日銀包囲網が形成されようとしているのです。
  こうなると、日銀は、「中央銀行の独立性」を守らなければならないという使命感・意地が出てきます。日銀は、どう動くのか。来年2006年は、春に向けて、このニュースがたびたび登場するはずです。そのとき、このコラムのことを思い出してください。


なるほど。全国消費者物価指数予測がプラスに転じる → 解除が近いとの観測 → 日本で投資していた外国人投資家
 → 日本でお金を借りるのをやめる → 円をドルに変えるのをやめる → 円高
posted by あみゅ at 21:18| Comment(6) | TrackBack(0) | 株式・マーケット(勉強) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変わかりやすく明瞭な説明でした。
ありがとうございました。
「お気に入りに」登録しました。
Posted by 藤森 秀展 at 2006年02月18日 18:07
ここ数日間、量的緩和政策解除に関するこのような分かりやすい説明を探していました。
やっと、これからの方向性が少し見えてきた気がします。
私も「お気に入り」登録しておきます☆
Posted by miya38 at 2006年02月26日 12:05
検索してて見つけました。
うまく説明されていて、量的緩和が、よくわかりました。
Posted by ブルーグラス at 2006年02月28日 00:13
大変勉強になりました。
ありがとうございました。
Posted by あき at 2006年02月28日 15:58
とても分かりやすく説明されていて、大変勉強になりました。ありがとうございました。
是非、私も「お気に入り」に登録させて下さい。
Posted by おかてい at 2006年03月02日 17:18
すいません。とてもわかりやすく、勉強になりました。ありがとうございます。
また、私のブログでも今回の内容を使わせて頂きました。私のブログへも是非お越し下さい。
Posted by おかてい at 2006年03月02日 18:37
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